1.はじめに
光応用センサの利点は、非接触・無導体の測定が可能、分布測定が可能、電源供給が不要、電磁誘導による障害なしなどである。そして光応用センサのもう一つの特徴は、光波を用いて、電流や電界等の電気量が測定できるものである。
本研究の目的は、磁気光学効果(ファラデー素子)による電流の測定を、電気光学効果(ポッケルス素子)による電圧の測定を、そして両効果によって電力の測定を実現することである。
2.原理
電流電圧の同時計測と電力計測
図1に電流•電圧•電力測定用光学系の概略図を示す。レーザ管より出た直線偏波のレーザ光は、λ/4板で円偏波となり、偏光子を通じθ₀=45˚の直線偏波となる。同じ方向にこの直線偏波を電流トランスデューサ部のファラデー素子に通すとファラデー効果により偏波方向が回転する。このTb3Ga5O12結晶でΔθ回転された偏波方向(θ₀+Δθ)の直線偏波を電圧トランスデューサ部のLiNbO₃結晶のz軸方向に伝播させる。結晶通過後ポッケルス効果により振動方向に位相差ΔΦを生じ、レーザ光は直線偏波から楕円偏波に変わる。これをハーフ·ミラーで分岐させ検光子T、U、Vの設定角を偏光子に対して0˚、45˚、0˚に選ぶことによって電流、電圧、電力を独立、同時に光の強度として検出することができる。
a) 電流測定の場合
検光子Tの方位角をθ₁=0˚、偏光子の偏光方向をθ₀=45˚とすると受光器Tの検波出力Ioutは
(1)
ただし、Δθ<<1
Δθ=偏光面の回転角(rad);
Pr=受光器における光強度(W);
KD=受光器の検波定数(V/W);
V=ベルデ定数(rad/AT);
N=コイルの巻回数(T);
I=直流電流(A)である。
となる。すなわち、検光子Tを偏光子に対して方位角を45˚に設定すると電圧に関係なく電流に比例した光の出力を得る。
b) 電圧測定の場合
同様に検光子Uの方位角をθ₂=45˚、偏光子の偏光方向をθ₀=45˚、バイアス板の位相差をφ₀=90˚とすると、受光器Uの検波出力Voutは
(2)
ただし、Δφ<<1
Δφ=光学的バイアス板の位相差(rad);
r=ポッケルス係数(rad/V);
l、d=結晶の長さ、厚さ(m);
=印加電圧(V)である。
となる。すなわち、検光子Uの方位角を偏光子と平行にすると電流に関係なく電圧に比例した出力を得る。
c)
電力測定の場合
θ₀=0˚、検光子Vの方位角を偏光子に対してθ₃ =45˚に設定すると、受光器Vの検波出力Poutは
(3)
ただし、Δθ、ΔΦ<<1
となる。レーザ・ビームのファラデー効果とポッケルス効果の同時効果によって直接電力に比例した値を計測することができる。
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3.途中経過と今後の課題
現在、図1に示す電気光学系をベンチ上に構成した段階であり、今の課題としては
1.レーザ光による電流測定の入出力特性
2.レーザ光による電圧測定の入出力特性
3.レーザ光による電力測定の入出力特性
の測定・評価を進める。